御霊前 御仏前の違いを解説！迷ったときの対処法も紹介

「御霊前」と「御仏前」の違いや使い分けに迷う方は多いのではないでしょうか。一般的に、四十九日までは「御霊前」、それ以降の法事では「御仏前」を使用しますが、宗教宗派による違いもあるため注意が必要です。

また、香典の金額や「御霊前の書き方」、お金の入れ方（お札の向きなど）にもマナーがあります。もし「どちらを使うべきかわからない場合は」、無難な表記として「御香典」を選ぶのも良いでしょう。

本記事では、通夜・葬式・初盆・法事での適切な表書きの選び方や、香典以外のお供えについても解説します。正しいマナーを身につけ、失礼のない対応を心がけましょう。

記事のポイント

• 御霊前と御仏前の違いと正しい使い分け
• 四十九日を境とした香典の表書きの選び方
• 宗教や宗派による表書きの違いと注意点
• 香典の金額相場やお札の向きなどのマナー

御霊前 御仏前の違いと正しい使い分け

・御霊前と御仏前の意味とは？
・使い分けのポイント｜四十九日が境目
・通夜・葬式・初盆・法事での選び方
・わからない場合はどうする？無難な表書き
・宗教宗派による違い｜浄土真宗の場合

御霊前と御仏前の意味とは？

「御霊前（ごれいぜん）」と「御仏前（ごぶつぜん）」は、弔事において香典袋の表書きとして使われる言葉です。それぞれ意味が異なり、適切なタイミングで使用する必要があります。

御霊前とは、亡くなった方の霊（魂）の前に供えるという意味を持ちます。

仏教では、故人は亡くなってから四十九日間はまだ成仏しておらず、霊の状態にあると考えられています。

そのため、四十九日法要までの香典袋には「御霊前」と書くのが一般的です。また、仏教だけでなく、神道の葬儀やカトリックのミサでも使用できることが多い表記です。

ただし、プロテスタントでは「御霊前」を使わないため注意が必要です。

一方で、御仏前は、故人が成仏して仏になったことを前提に使われる表書きです。仏教では、四十九日法要を終えることで故人が霊から仏へと昇華すると考えられています。

そのため、四十九日以降の法要や、一周忌、三回忌などの仏事に参列する際には、「御仏前」と記すのが一般的です。

つまり、御霊前と御仏前の違いは、故人がまだ「霊」の状態であるか、それとも「仏」になった後なのかによって使い分ける点にあります。

しかし、宗派によってはこの概念が異なるため、詳細は後述します。

初めて弔事に参列する方にとっては混乱しやすい点ですが、基本的には「御霊前は四十九日まで」「御仏前は四十九日以降」と覚えておくとよいでしょう。

御霊前と御仏前を使い分ける上で、最も重要な基準となるのが「四十九日法要」です。日本の仏教では、故人は亡くなってから四十九日の間、この世とあの世の間をさまようとされています。

そして、四十九日目に極楽浄土へ行けるかどうかの審判が下されると考えられています。この四十九日の期間を「中陰（ちゅういん）」と呼び、霊が仏へと転じる重要な区切りの日となります。

そのため、四十九日法要を境に、香典の表書きを「御霊前」から「御仏前」に切り替えるのが一般的です。

例えば、通夜や葬儀、初七日法要などは四十九日以前の儀式であるため「御霊前」を使用し、四十九日法要やその後の法事では「御仏前」を選ぶというルールになります。

ただし、四十九日法要の日程が前倒しされることもあります。本来、四十九日目に行うべき法要を、参列者の都合を考慮して四十八日目や四十七日目に繰り上げることがあります。

この場合、たとえ四十九日が経過していなくても、四十九日法要として執り行われるのであれば、「御仏前」を使用するのが通例です。

また、故人が亡くなった日から四十九日が経過しているかどうかわからない場合は、「御香典」と書くことでどのタイミングにも対応できます。

特に遠方の方が後日香典を送る際や、四十九日を過ぎたかどうか確認できない場合には、「御香典」という表記が無難です。

通夜・葬式・初盆・法事での選び方

弔事にはさまざまな場面がありますが、それぞれの場面において適切な表書きを選ぶことが大切です。御霊前と御仏前の選び方は、以下の基準で判断するとよいでしょう。

通夜・葬式（葬儀・告別式）

葬儀は、故人が亡くなった直後に行われる儀式であり、四十九日前の弔事に該当します。

そのため、香典袋の表書きは「御霊前」とするのが一般的です。ただし、後述の通り、宗派によっては異なる表記を用いる場合があります。

初盆（新盆）

初盆とは、故人が亡くなってから初めて迎えるお盆のことです。四十九日を過ぎた後に行われるため、香典袋の表書きは「御仏前」が適切です。

ただし、地域や家庭の風習によって異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。

法事（四十九日法要、一周忌、三回忌など）

法事は、故人の供養のために行われる儀式です。四十九日法要までは「御霊前」を使用し、それ以降の一周忌や三回忌、七回忌などの法事では「御仏前」を選ぶのが一般的です。

なお、仏教以外の宗教では別の表記を用いることもあるため、宗教や宗派を考慮した上で表書きを決めることが重要です。

わからない場合はどうする？無難な表書き

弔事に参列する際、御霊前と御仏前のどちらを使用すべきか迷うことがあります。特に、四十九日が過ぎているかどうかわからない場合や、宗派が不明な場合には、適切な表書きを選ぶことが難しいかもしれません。

こうした状況では、「御香典」と書くのが最も無難です。

「御香典」とは、お香や供物の代わりに供える金銭という意味を持ち、四十九日前後に関係なく使用できる表記です。

また、宗派を問わず使えるため、相手の宗教が不明な場合にも適しています。

もう一つの選択肢として「御香料」という表記もあります。これは「御香典」と同様に、供物の代わりに供えるお金を指し、仏教の法要に広く使用できます。

ただし、神道やキリスト教には適さないため、迷った場合は「御香典」を選ぶと安心です。

宗教宗派による違い｜浄土真宗の場合

宗派によっては、御霊前と御仏前の考え方が異なります。特に浄土真宗では、「霊」の概念がないため、四十九日前であっても「御霊前」は使用せず、「御仏前」を用いるのが正式なマナーです。

浄土真宗では、人は亡くなるとすぐに仏となり、極楽浄土へ往生すると考えられています。そのため、「霊」という概念が存在せず、四十九日を待たずに故人が仏になるという教えが根付いています。

この考え方から、浄土真宗の葬儀や法事では、最初から「御仏前」を使うのが適切とされています。

もし参列する葬儀が浄土真宗かどうかわからない場合は、「御香典」と書いておくと無難です。

また、事前に遺族や葬儀社に宗派を確認できるのであれば、適切な表書きを選ぶために確認しておくとよいでしょう。

御霊前 御仏前の書き方と金額の目安

・御霊前の書き方｜表書きと名前の記入方法
・お金の入れ方｜お札の向きと折り方のマナー
・いくら包む？関係性別の金額相場
・御香典との違いとは？適切な表記を選ぶ
・お供えの選び方｜香典以外の供え物のマナー

御霊前の書き方｜表書きと名前の記入方法

香典袋の書き方には、いくつかのマナーがあります。特に「御霊前」の表書きを記載する際には、適切な筆記具を使用し、名前を正しく記入することが重要です。

誤った書き方をすると、弔意を示す場において失礼にあたる可能性があるため、注意が必要です。

まず、香典袋の表書きですが、袋の上部中央に「御霊前」と記載します。仏式の葬儀や四十九日前までの法要では、この表記が一般的です。

ただし、浄土真宗では「霊」という概念がないため、「御仏前」を使用することになります。宗派が分からない場合は「御香典」と記載すると無難です。

次に、名前の記入方法について説明します。表書きの下には、香典を包んだ人の名前をフルネームで記載します。

個人で包む場合は、中央下部に氏名を記入し、連名の場合は人数に応じた書き方が必要です。例えば、夫婦で包む場合は、夫の名前を中央に書き、その左側に妻の名前を記載します。

また、3名までであれば、右から順に目上の方の名前を書くのが基本です。4名以上の場合は、代表者の名前を書き、その左下に「他一同」と記載し、別紙で全員の名前を添えるのが適切な方法です。

筆記具についても注意が必要です。香典袋の記入には、一般的に「薄墨」の筆ペンを使用します

。薄墨を使う理由は、突然の訃報で悲しみに暮れながら記入したことを表すためです。ただし、薄墨の筆ペンが用意できない場合は、黒のサインペンで代用することも可能です。

一方、ボールペンや鉛筆での記入はマナー違反とされるため、避けるようにしましょう。

お金の入れ方｜お札の向きと折り方のマナー

香典を準備する際、お金の入れ方にも細かいマナーが存在します。適切な方法でお札を包まないと、相手に失礼にあたる場合があるため、慎重に対応することが大切です。

まず、お札の向きについて説明します。香典袋にお札を入れる際は、肖像画が印刷されている面を裏側（中袋の裏面）にし、かつ肖像画が下向きになるように入れるのが基本です。

これは、「悲しみのあまり顔を伏せる」という意味を持ち、弔事において適切な作法とされています。ただし、地域によってはお札の表裏が異なるケースもあるため、事前に確認すると安心です。

次に、お札の折り方についてですが、基本的に新札は避けた方がよいとされています。新札を使用すると「前もって準備していた＝死を予期していた」と受け取られかねないため、少し使用感のあるお札を用いるのがマナーです。

もし新札しか用意できない場合は、一度折り目をつけることで、新品ではない状態を作るとよいでしょう。

また、複数枚のお札を入れる場合は、向きを揃えて入れることが大切です。向きがバラバラだと、不作法と見なされることがあります。

中袋がないタイプの香典袋を使用する場合は、お札をそのまま折らずに包み、袋の下側を先に折り、上側をかぶせる形で封をします。この折り方には、「悲しみを閉じ込めないようにする」という意味が込められています。

香典袋に封をするかどうかについても、地域や慣習によって異なります。一般的には、中袋にのり付けをしない方が、ご遺族が中身を確認しやすいため、封をしないのがマナーとされています。

ただし、地域の風習によっては封をすることが求められる場合もあるため、迷った場合は周囲の方に確認するとよいでしょう。

いくら包む？関係性別の金額相場

香典の金額は、故人との関係性や自身の年齢によって異なります。また、地域の慣習や家庭の事情によっても金額の相場は変わるため、適切な額を包むことが大切です。

一般的な目安として、身内の場合は次のようになります。

• 両親・子供：5万円～10万円
• 兄弟姉妹：3万円～5万円
• 祖父母：1万円～3万円
• 叔父・叔母・その他親族：5,000円～3万円

会社関係や友人・知人の場合は、以下が目安です。

• 勤務先の上司・同僚・部下：3,000円～1万円
• 取引先の方：5,000円～1万円
• 友人・知人：5,000円～1万円

香典の金額は、奇数にするのがマナーとされています。これは「割り切れる偶数は縁が切れることを連想させる」という考えからきています。

ただし、2万円に関しては、1万円札を2枚ではなく、1万円札と5千円札2枚の組み合わせにすると、偶数ながらも問題ないとされるケースが多いです。

また、「4」や「9」が含まれる金額は避けるのが一般的です。「4」は「死」を、「9」は「苦」を連想させるため、不吉な数字とされています。たとえば、4,000円や9,000円は避け、5,000円や1万円に調整するのが無難です。

御香典との違いとは？適切な表記を選ぶ

「御霊前」や「御仏前」と並んでよく使われるのが「御香典」です。御香典とは、お線香やお供え物の代わりに渡す金銭を指し、宗派を問わず使える表記として知られています。

御香典と御霊前の違いは、使用できる場面の広さにあります。御霊前は主に四十九日前の仏式の葬儀で使われますが、御香典は四十九日前後を問わず使用できるため、宗派が不明な場合や時期がわからない場合に適しています。

また、仏教以外の宗教でも使用できる点が特徴です。神道やキリスト教の葬儀では「御霊前」が適さない場合があるため、「御香典」にすると失礼にならずに済みます。

お供えの選び方｜香典以外の供え物のマナー

香典のほかに、お供え物を持参する場合もあります。お供え物には、食品や線香、花などがあり、故人やご遺族の意向に合わせた選び方をすることが大切です。

一般的に仏式の葬儀では、お菓子や果物、線香、ろうそくなどが選ばれます。これらは日持ちするものが好まれ、特に個包装のお菓子は分けやすいため適しています。

一方、神道では日本酒や海産物、キリスト教では白い花のアレンジメントなどが供え物として選ばれます。

お供え物を渡す際には、のし紙をかけ、「御供」または「御供物」と表書きを記入するとよいでしょう。

御霊前 御仏前の違いと正しい選び方

• 御霊前は四十九日法要まで使用する
• 御仏前は四十九日法要以降に使う
• 仏教では四十九日を境に故人が霊から仏になると考えられている
• 浄土真宗では四十九日前でも御仏前を使う
• 宗派が不明な場合は御香典と書くのが無難
• 通夜や葬儀、初七日では御霊前を選ぶ
• 一周忌や三回忌などの法要では御仏前が適切
• 初盆では御仏前を使用するのが一般的
• 神道では御霊前ではなく御神前などを使う
• プロテスタントでは御霊前を使用しない
• 香典袋の表書きは薄墨の筆ペンで書く
• 連名の場合は右から目上の人の名前を記入する
• 香典の金額は奇数にするのがマナー
• お札の肖像画を下向きにして入れる
• お供えには日持ちする食品や線香が適している